ベトナムマンション購入顛末記(1)

久しぶりのブログ更新となってしまった。今回のエントリは飲み会での鉄板ネタなのだが、備忘録としてここに記載する事にする。

 

もう8年前の話になる。2010年。ホーチミンに正式に駐在となって3年目のことだ。今でもそうだが、当時も日本で預金をしても利子はほとんどつかない。一方、ベトナムの銀行で米ドルで預けると年率で4%前後の利子。日本で置いておくよりもこちらで(為替リスクの低い)米ドルで利子を稼いだほうが良い、と当時日本の銀行に預けてあった預金のほぼ全額をベトナムに送金し、米ドルで銀行に預けていた。

 

ところが、2011年だったか、ベトナム中央政府の政策の方針転換で、急に米ドルの銀行利子がほぼゼロとされてしまった。噂ではベトナム政府に米ドルが枯渇して市井の需要を下げたかったということがあったようだ。結果的にあるまとまったお金がベトナムにて宙に浮いてしまう形となった。日本に送金するか、為替リスクは高いがベトナムドンで銀行に預けるか、あるいは株でも買うか。色々悩んだ挙げ句、こちらで手頃な値段のマンションを買ってしまおう、と思うに至った。

 

賃貸に毎月払うのであれば、今その資金でマンションを買ってしまい、ベトナムから撤退となった際に同額程度で売れれば御の字、という気持ちであった。当時の不動産市況としては、リーマンショックまではプチバブルだったものの2008年以降は低迷し、銀行の不動産業者からの貸しはがしも行われてたようで、明らかに不動産価格は低水準であった。サラリーマンである以上いつベトナムから撤退するかもわからず、かつ外国人である私が銀行からお金を借りて不動産を買うことは難しいと考えていたので、手元資金を大きく超えることがないお手頃な物件を探していた。当時は、まだ外国人に完全に不動産購入の門戸を開いたわけではなかったが、特別な技能を有する外国人、というので博士号を持っていたことが功を奏したようで、購入する目処を立てることが出来た。

 

そして選んだのが建設中の物件A。驕奢なモデルルーム、魅力的なマスタープラン、イメージビデオに心を躍らされた。人気の区の際に立地しておりその区自体ではないこともあって、値段も届かなくはない範囲であった。建設中に全額支払えば完成後の値段よりも安くなりますよ。担当の甘い言葉についつい「割引後なら手持ち資金プラスアルファで買えるな」と算盤を弾いた。そして購入を決断し支払いを行ったのが2011年の5月。ちなみに、ディベロッパーから直接購入したわけではなく、ディベロッパーの仲介でベトナム人オーナーからの購入となった。そのオーナーが当時そこそこ名前のしれた歌手であったことも高揚感の一因となった。竣工予定が同年10月ということで、こちらはスケルトンで購入するのが一般的なので、独自に内装業者に設計を依頼し始めた。

 

ところが。竣工予定の10月になっても工事は終わらない。私が購入したビルの躯体は一応出来ていたのだが、内装工事が全く終わらない。こちらで契約した内装業者には10月開始で発注していたので私の部屋の内装工事を初めて良いかディベロッパーに聞くと、良いという。そして作業を始めてもらったのだが、なんとビル自体の内装業者がこちらの業者が持ち込んだ部材をパクってしまったり(!)混乱極まりない状態に。これではあかん、と、こちらの内装業者には一旦待機してもらうことに。

 

そしてその年の12月。私含めたオーナー達が一同にディベロッパーから集められた。そしてディベロッパーから衝撃の一言。「続けていくお金がない」と。どうやら銀行の貸しはがしの対象になってしまったようで、内装工事や他のビルの建設を続ける資金が枯渇してしまったようだ。「契約を一旦解除させていただきたい。契約書に従って皆さんから預かったお金は返却する」と。そしてそこから"銭"闘が始まったのであった。

 

次回に続く)